第27章

平岩空人は、彼女の言い方がどこかいつもと違うことに気づいたようだったが、深くは考えなかった。

「足の傷も最近は良くなってきてる。ちゃんと養生していれば、しばらくしたら自由に動けるようになる」

和泉静留はそう言って安心させると、薬を替えたあと手早く周りを片づけた。

「……そうか」

平岩空人が短く答えると、そこで会話は途切れた。部屋に落ちる沈黙。

和泉静留は救急箱を手にして出ていこうとする。だがドア口まで行ってから、ふと振り返り、声を落として尋ねた。

「記憶のほうは、どれくらい戻った?」

静留が彼をここに置くと決めた理由は、怪我だけじゃない。何より彼には記憶がなく、行くあてもないか...

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