第30章

「ママ、どうして入ってこないの?」

華蓮は目ざとく、真っ先に庭の外で立ち尽くしている和泉静留を見つけると、声を張り上げて呼んだ。

その声ではっとして、和泉静留は我に返る。

彼女は足早に周囲へ視線を走らせ、小さな庭の外に怪しい人影がないことを確かめてから、ようやく門をくぐった。

しゃがみ込み、瞳いっぱいに不安を滲ませて華蓮を見つめる。

「今日、変な人見なかった? それか最近、何かおかしいことはなかった?」

華蓮は小さな首をかしげて一生懸命考え、それからぶんぶんと横に振った。

「ママ、見間違いじゃない? 最近、外はすっごく静かだよ。だれもいないよ」

ここはH市の郊外。ふだん人の気...

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