第34章

江原信也はまぶたを持ち上げ、病室へ入ってきた和泉白子を見た。その視線が、一瞬で沈む。

こんなみっともない姿を、白子にだけは見られたくなかった。

そもそも――和泉静留を捨ててまで白子を選んだのは、自分だ。

それが今、静留に噛みつかれてこのザマ。外に漏れたら、笑いものどころじゃない。

「……なんで来た」

声は荒い。苛立ちまで滲んでいた。

だが和泉白子は、その冷たさに気づかないふりをした。隙のない儚げな笑みを浮かべ、保温ポットを大事そうに抱えたまま、そっとベッド脇へ寄る。

「怪我したって聞いたの。心配で……あなたの好きなスープ、煮てきたのよ。信也、手は……大丈夫?」

言いながら、彼...

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