第36章

車内の冷房はきんきんに効いているのに、和泉静留は全身が焼けつくように熱かった。

熱の原因は温度じゃない。江原信也から滲み出る、吐き気を催すほどの侵略の気配――それが、皮膚の裏側をざらつかせる。

静留は無理やり呼吸を整えた。指はシートベルトを強く握りしめ、関節が白く浮く。

正面からぶつかるのは論外だ。今の江原信也は狂っている。刺激すれば、被害を受けるのは子どもたち。

彼が見たいのは、和泉静留が折れる姿。なら、見せてやる。――演じてやる。

静留は大きく息を吸い、窓の外へ逃がしていた視線をゆっくり引き戻す。陰に沈んだ横顔。そこに、わざと弱さを滲ませる声を落とした。

「江原信也……本気で...

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