第37章

車はゆっくりと走り去り、小さな庭の門先にぱっと砂ぼこりが舞った。やがてそれも、道の突き当たりへ吸い込まれるように消えていく。

和泉静留は自宅の門前に立ち尽くし、全身の力を根こそぎ奪われたみたいだった。

震える手を持ち上げ、バッグの中からカードキーを探り当てる。

帝国ホテル 8808。

その文字が、呪いの言葉みたいに頭の中でぐるぐると回り続けた。

今夜8時。

行かなければ、江原信也という畜生は本当に――新学期が始まったら、幼稚園に押しかける。皆の前で、子どもたちの最後の尊厳を引き裂くつもりだ。

まだ幼いとはいえ、あの子たちは敏感だ。

「私生子」なんて烙印を押されたら、一生が影の...

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