第53章

あの人が、そんなことをするなんて……。和泉静留の怒りは、さらに燃え上がった。

ひどすぎる。言いたいことがあるなら、全部自分にぶつければいいのに。どうして人を殴るなんて――。

和泉静留は病院の冷たい壁にもたれた。骨の髄まで冷え切っていく感覚に、肩が小さく震える。

結局、師匠を巻き込んだのは自分だった。江原信也との関係のせいで。和泉白子が自分に向けた嫉妬と憎しみのせいで。何も悪くない師匠が、犠牲になった。

その場でずっと待った。もう病院を出て、正門の前でタクシーを拾うつもりだったのに――気づけばただ、呆然と入口に立ち尽くしていた。人影もまばらで、車もほとんど通らない。

冷たい風が頬を刺...

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