第59章

あのとき自分が死にかけたことを思い出し、佐藤啓介は胸の奥がいっぱいになった。

今の世の中は、驚くほど冷たい。心臓発作を起こした通りすがりの男なんて、なおさらだ。大通りでおばあさんが転んだとしても、そう簡単に手を差し伸べる人はいない。

それなのに和泉静留は、彼を病院まで運び、意識を失っている間の治療費まで立て替えてくれた。

目を覚ました佐藤啓介は、真っ先に彼女を探して礼を言おうとした。だが、和泉静留は名乗りもせず、黙って立ち去っていた。

それから二年。佐藤啓介はその恩を忘れられず、防犯カメラまで確認して、ようやく彼女の顔を知った。――ただ、まさか再会が二年後になるとは思わなかったが。

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