第63章

山あいを渡る風が、草木の青い匂いを運んでくる。

平岩空人は耳がいい。足元がふかふかの落ち葉でも、わずかな異変を聞き逃さない。

彼はわざと歩調を落とし、和泉静留の腕にそっと手を添えて、ひとまず待つよう合図した。

『どうしたの?』

和泉静留の視線を受け、平岩空人は声をひそめて答える。

『左に3mほど行った先にガレ場がある。表面の土が緩い。子供たちは山側を歩かせてくれ。俺が先に確かめる』

和泉静留は反対せず、子供たちを連れて彼の後ろについた。

平岩空人が一歩先に出る。

左側の地面へ踏み込み、トレッキングポールを深く突き立てる。十分に安定を確かめてから、和泉静留へ小さくうなずいた。

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