第16章

気のせいだろうか。礼を言った瞬間、星野煌の表情がいっそう険しくなったように、零崎折識には感じられた。

車が路肩に止まる。零崎折識はドアを開けた。

「ありがとうございました、星野社長」

星野煌は返事一つせず、車は排気音を残して猛スピードで走り去った。

彼が本気で怒っていることだけは確かだが、零崎折識にはその理由がいまいち掴めなかった。

呆然と立ち尽くした後、彼女は会社の方へと歩き出した。

だが、その一部始終を目撃していた人物がいた。

水鏡美琴だ。

零崎折識が星野煌の車から降りてくるのを見て、水鏡美琴は両手の拳を震えるほど強く握りしめた。

昨日は目の前で星野煌に抱きかかえられて...

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