第186章

部屋の空気は、いっそう重苦しいものになっていた。

廊下では、数人の看護師がドアに耳をそばだてている気配がする。

椿原冴はそんなことなど意に介さず、ソファに腰を下ろして悠然と脚を組んだ。その瞳には嘲笑が浮かび、眼底には勝利を確信した光が宿っている。

「いい? これであんたに選択権がなくなったってわけ」

「まさか社長をたぶらかすなんて腕があるとは思わなかったわ。一体いつからデキてたの? まさか入社したときからとか?」

椿原冴は鼻で笑った。

「見た目は地味なくせに、やることは大胆ね。水鏡美琴と星野煌が長年婚約していることくらい知ってるでしょ? あんたは徹頭徹尾、ただの浮気相手。恥知らず...

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