第213章

月光が降り注ぐバルコニー。

零崎誠良はカジュアルな服装に身を包み、金縁の眼鏡を掛けていた。レンズの奥の瞳が微かに揺らいだが、纏っている空気は変わらず温厚で優雅そのものだ。

彼は指先で眼鏡の位置を直すと、こう言った。

「実は、ずっと前から分かっていたんだ。僕たちに未来がないことはね。君の瞳の中に、僕への愛が見当たらなかったから。でも、君が僕に悪意を持っていないことだけは信じているよ」

手摺に背を預け、足を交差させて気怠げに夜空を見上げる。

「君の重荷を分かち合いたいと何度も思ったけれど、残念ながらその機会は与えられなかった。……一つ聞いてもいいかな。もしある日、君と彼との関係が完全に...

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