第244章

「馬鹿だな、君は。こんな時だっていうのに、どうして俺に礼なんて言うんだ。俺がいなければ、こんな目に遭うこともなかったのに。それに……」

あんな酷いことをされたというのに、彼女には一点の怨嗟もない。

いや、零崎折識とて聖人ではない。恨みがないわけではないが、それを口にすることはできなかったのだ。

自分にとって星野の母は敵であり、加害者だ。

だが星野煌にとっては、血を分けた実の母親なのである。

ここで自分が被害者面をして糾弾すれば、二人の間に溝が生まれる。自分を押し殺すのは気が引けるが、これが最善の選択だった。

波風を立てて不毛な争いをするより、今は沈黙を選ぶ。復讐? そんなものは後...

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