第70章

運悪く、伊藤諭介が昨日のデータを目にしたところだった。

彼は数杯のコーヒーを手に営業部へ姿を現すと、その視線を真っ直ぐに零崎折識へと向けた。

「昨日、折識ちゃんは一気に五件も契約を取ったんだってね。すごいじゃないか」

「これは僕からのご褒美だ。みんなも折識ちゃんにあやかって、飲んでくれ」

だが、周囲から拍手が湧き起こることはなかった。代わりに向けられたのは、薄っすらとした殺気を帯びた視線の数々だ。

まだ月末でもないのに、現在の順位やノルマの達成状況を公開する必要などどこにもない。

そんなことをすれば、ただ敵を作るだけだというのに……。

伊藤諭介は、堂々と彼女を孤立させようとして...

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