第97章

会社の入り口。

そこは瞬く間に数百人の人波に飲み込まれ、水も漏らさぬほどの混雑ぶりを見せていた。

野次馬は増える一方で、会社の警備員たちもこれ以上の制止は不可能だと悟ったのか、せめて建物内への侵入だけは防ごうと防戦一方になっている。

怒号と噂話が入り混じり、喧騒は止む気配がない。

突如、人混みの中から悲鳴のような声が上がった。

「あれ、椿原冴じゃない? サングラスとマスクしてるけど……」

衆人の視線が一斉に注がれる。

隅の方で、サングラスに帽子、マスクで顔を覆った人物が、こそこそと立ち去ろうとしていた。

その正体が露見するのに時間はかからなかった。紛れもなく、椿原冴その人であ...

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