第107章 セクシーな女性(2)

東野月は煙のように姿を消した。瞬きする間もなく葉山天のそばから離れ去るその動きに、葉山天は大いに感嘆する。天龍の人間というのは、実に神出鬼没なものだ。

ひとしきり悪態をついた後、葉山天は手の中にある黒いカードに視線を落とした。このカードは恐らく、国家が特殊部門の人間が行動しやすいように発行したものだろう。限度額無制限のクレジットカードと似ているが、その機能はさらに強力なはずだ。

葉山天はカードを大切に服の内ポケットにしまい込むと、見知らぬ街並みを眺めながら、ふと「綾瀬玲奈」のことを思い出した。この土地は、かつて綾瀬玲奈が生活していた街だ。せっかくK市に来たのだから、葉山天としては当然、彼...

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