第114章 情熱(1)

K市において、このモデルのベントレー自体はさして珍しいものではない。だが、葉山天が思わず舌を巻いたのは、そのナンバープレートだ。「6」の数字が四つ、綺麗に一列に並んでいる。このナンバーだけで相当な価値があるだろうし、これを入手するには相応の強力なコネクションが必要なはずだ。

ベントレーは、綾瀬玲奈の愛車である赤いフェラーリの後方に滑らかに停車した。運転席のドアが開き、仕立ての良いスーツに身を包んだ男がゆっくりと姿を現す。

綾瀬玲奈が見知らぬ男と抱き合っている——その光景を目にした瞬間、男の心臓は血を流す思いだった。今すぐ駆け寄って二人の頬を張り飛ばしてやりたい衝動に駆られるが、表情には微...

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