第116章 情熱(3)

「綾瀬玲奈、あなたは飛武さんと二階でお話ししてらっしゃい。私は葉山天に用があるの」

鈴木雲は娘を遠ざけ、二人が二人きりになれる機会を作ろうと画策していた。ついでに、葉山天に釘を刺しておくつもりだ。

綾瀬石賢はそんな俗事には我関せずといった様子で、柳崎飛武から贈られた『香山』の真筆を嬉しそうに抱え、書斎へと研究しに行ってしまった。

綾瀬玲奈は少し抵抗を感じた様子で言った。

「お母さん、葉山天は私の友達よ。私の前で言えない話なの?」

「この子はもう。まさか取って食おうってわけじゃないわよ。さっさと飛武さんと二階で遊んできなさい。私は葉山天と世間話をするだけ。安心して、いじめたりし...

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