第136章 誘拐(1)

「きゃあ……!」

受話器の向こうから綾瀬玲奈の悲鳴が響いたかと思うと、すぐに男の怒声が続いた。

「きさま、連絡しやがったな!」

『パシッ』という乾いた音が葉山天の耳に届く。綾瀬玲奈が平手打ちを食らったのだろう。携帯電話が地面に落ちたような音がして、綾瀬玲奈が必死に叫ぶ声が聞こえた。

「K市西区の……廃工場に……」

プツッ、ツーツー……。綾瀬玲奈がそう言い終えるや否や、通話は無情にも切断された。

葉山天は全身に青筋を浮かべ、両目から火が出るほどの怒りに震えた。綾瀬玲奈をぶったあの男の声、決して忘れはしない。必ずや凄惨な報いを受けさせてやる。

一瞬の沈黙の後、葉山天は思考を巡らせた...

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