第65章 抗えない誘惑

葉山天は少し考えた末、やはり桜島春奈をホテルへ送り届けることにした。彼女は気丈な女性とはいえ、あれだけの目に遭い、危うく汚されかけた直後だ。思い詰めた女性なら自殺してもおかしくない状況と言える。ましてや、あの男に指示を出していた黒幕が、他ならぬ桜島春奈の夫であったとなれば、彼女の心が冷え切ってしまっているのは想像に難くない。

ささやかな要求すら拒むのは、あまりに酷というものだ。葉山天は車を走らせ、病院からほど近いホテルへ桜島春奈を送り届けた。支払いを済ませ、デラックスルームを取ってやると、桜島春奈は葉山天の腕に絡みつき、共に上の階へと向かった。

葉山天は彼女を部屋の前まで送ると、そこで足...

ログインして続きを読む