第81章 寝取られた

葉山天は苛立っていた。確かに一服して鬱屈を晴らしたい気分ではあったが、刀傷のある男が差し出したタバコには手を付けず、自分のポケットから箱を取り出して一本くわえた。すると、男はすぐにライターを手に取り、葉山天に火をつけた。

こいつ、意外と気が利くじゃないか。車を叩き壊されさえしなければ、葉山天も彼に対してそこまで悪い印象は抱かなかっただろう。

刀傷の男が吸っているのは安物のタバコだ。葉山天の高級タバコを見て、あからさまに羨ましそうな視線を送ってくる。葉山天はタバコをしまおうとしたが、その物欲しそうな様子を見て、一本取り出して投げてやった。

男はタバコを受け取ると、一瞬きょとんとした。まさ...

ログインして続きを読む