第96章 機内の美人(1)

人でなしは、影が目を覚ますことなど心配していなかった。彼が手にしている小さな磁器の瓶、その中身は以前、深山に隠れ住む老漢方医から盗み出したものだった。ある任務の最中、深い森に迷い込んだ人でなしは、山河を越え、ようやく出口に差し掛かったところで一人の老人に出会った。その老人こそ、世俗を離れた達人であった。

手にした小瓶に入った薬剤は本来、老人が山林の獲物を仕留めるために使うものだった。だが、人でなしはそれを盗み出し、あろうことか水原玲子を薬で犯すために利用したのだ。そして今回、彼は同じ手口を再び使おうとしている。しかも対象は、同じ組織に属する女だ。その性根がいかに腐りきっているか、言うまでも...

ログインして続きを読む