第10章

病室では、陸原の爺さんがようやく眠りについたところだった。眉間にはまだうっすら皺が残り、昼間の怒りが完全には引いていないのが見て取れる。

林原知世は掛け布団を整え、寝息を確かめる。――そのとき、病室のドアが開く気配がした。

こんな時間に、誰?

知世はもう一度、眠る爺さんへ視線を落とすと、音を立てないように廊下へ出て、そっと扉を閉めた。

振り返った瞬間、白石キキが保温ポットを両手で抱えて入ってくるのが見えた。服も着替えたらしく、素っ気ない白いワンピース姿だ。

その顔を認めた途端、知世の足が止まる。さっきまで爺さんに向けていた柔らかさが、一瞬で剥がれ落ちた。

昼の宴で、白石キキと陸原...

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