第31章

その言葉を聞いて、林原知世はますます可笑しくなった。

そもそも結婚を嫌がったのは陸原凛のほうだ。婚姻届を出したその足で白石キキを連れて海外へ逃げたくせに、いまさら「俺の妻」だなんて。

知世は半歩だけ後ろへ退き、距離を取る。視線には露骨な嫌悪が滲んだ。

「陸原凛、頭でもおかしいの? 具合が悪いなら病院行きなさいよ。うちで酔って暴れないで」

もともと苛立っていた陸原凛は、そこへ知世の反撃を食らい、残っていた酒気が一気に理性を焼き切った。

数歩で知世の目の前へ詰め寄る。酒の匂いと怒りが、むっと顔にかかる。

「俺が病気だと? じゃあお前は何だよ」

目を剥くように彼女を睨み、言葉を急き立...

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