第56章

その声は鈴が転がるみたいに澄んでいて、言い終わるや否や、林原知世は反射的に振り向いた。

ピンクのミニスカートを揺らしながら、裾をつまんだ少女が小走りで駆け寄ってくる。無邪気な笑み。ぱっちりした杏仁形の瞳がきらきら光っていた。

小原寧音――小原家の末娘だ。

この二年、海外へ芸術留学に出されていたせいで、温室育ちの花みたいに繊細で柔らかい。けれど、名家の令嬢らしい自負と傲りも、きっちり身にまとっている。

幼い頃から宮崎直志の近所に住み、子どものころは彼の後ろをくっついて走り回っていた。

今回の帰国で、真っ先に会いに来たのも宮崎直志だった。

視線が宮崎直志に落ちた瞬間、寧音の目がぱっと...

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