第27章 冷戦

「放して!」

菅野真理は石橋航平の手を乱暴に振りほどいた。刃物みたいに鋭い視線を突き刺す。

「もう一回触ったら、その手――二度と上がらなくしてあげる」

石橋航平はその冷気に気圧され、反射的に半歩引いた。だが意地で踏みとどまり、また一歩詰める。

「真理……ちゃんと話し合えないか?」

「話すことなんてない」

菅野真理は冷ややかに一瞥する。

「それに、ここ女子トイレ。まだ分からないなら、警備員に摘み出してもらうわよ」

踵を返した。

けれど石橋航平はしつこくついてくる。廊下の突き当たりまで――影のように。

菅野真理はぴたりと足を止め、振り向いた。瞳の奥に氷が張る。

「石橋航平。...

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