第31章 勢いを借りる

「……あなた、何してるの? 出て行けって言ったのはあなたでしょ。なのに今さら止めるなんて……私って、いったい何なの?」

菅野真理は石橋結翔を見上げ、行き場のない思いをぶつけた。

石橋結翔の瞳が、ゆっくりと深い色を帯びていく。

「俺のそばに残ると決めたなら、簡単に離れようなんて思うな」

菅野真理はなおも意地を張り、ぷいと顔を背けた。

次の瞬間、石橋結翔の指が彼女の顎をつかみ、強引にこちらへ向かせる。声だけは少しだけ柔らかい。

「婚約を破棄する、なんて言葉……二度と聞きたくない」

瞳の奥で渦巻く独占欲に、菅野真理の胸がひゅっと縮む。圧に押され、息を止めてしまうほどだった。

「でも...

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