第80章 エゴイスト

真理は小さく首を傾げ、怪訝そうに言った。

「どうして?」

石橋結翔はまぶたを伏せる。くるりと反った睫毛がかすかに震え、羽ばたく寸前の蝶みたいだった。

窓辺に置いた手に、じわりと力がこもる。指がきゅっと縮まり、胸の奥は荒波みたいに掻き乱される。迷いが、何度も何度も押し寄せてきた。

真理に、自分が彼女に寄りかかっていることを知られたくない。そんなの、子どもっぽすぎる。

人は自由に憧れる。誰だって縛られたくはない。

自分だけの都合で、彼女を閉じ込めるわけにはいかない。

石橋結翔は心の中で何度も言い聞かせ、ゆっくり顔を上げた。唇の端に、苦い笑みが浮かぶ。

「ちょっと、厄介なことがあっ...

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