第5章

美和視点

翌朝、寮を出たところで亮が私の前に立ちはだかった。彼は疲れきっていて、目は充血していた――明らかに眠っていない顔だった。

「美和、話がある」

「話すことなんてない」私は冷たく彼の横を通り過ぎ、学術棟に向かって歩き出した。「あなたはもう決めたでしょ」

「昨日の夜は緊急事態だったんだ!」亮は必死な声で後を追ってきた。「彼女、本当に困ってたんだ。行かなくちゃいけなかった!」

私はぴたりと足を止め、彼の方へ振り向いた。「緊急事態? じゃあ私は何? どうでもいい存在ってこと?」

「そんなわけないだろ! でも彼女、誰かにつけられてるって怯えてて……」

「ふざけるな!、自分の言...

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