第6章

美和視点

夕暮れ時、寮の外で引っ越しの段ボールを片付けていると、亮が慌てたように駆け寄ってきた。

彼は私を見ると足を止め、複雑な感情が顔をよぎった。

「美和……本当に、引っ越すのか?」声には、かろうじて聞き取れるほどの落胆が滲んでいた。

「明日ね」私は体を起こし、落ち着いて手の埃を払った。「新しいアパートはキャンパスに近いけど、静かなだけマシかな」

亮は数秒間黙り、視線を揺らした。「美和、俺たちのことだけど……」

「話すことは何もないわ」私は彼の言葉を直接遮った。「あなたが選んだこと。私が選んだことよ」

「俺は……」

「亮」私は彼の目をまっすぐ見つめ、不意に真剣な声にな...

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