第11章

早村謙介のキスが、ふっと止まった。虚を突かれたように動きが鈍り、その隙に腕の力もわずかに緩む。

鈴木青美はその瞬間を逃さなかった。胸を押して腕の中から抜け出すと、さっと数歩下がり、乱れた襟元をきつくかき合わせる。

「早村謙介。私、潔癖なの」

一語ずつ、噛んで含めるように言い放つ。

「他の人が使ったものなんて、たとえ金や玉で飾ってあってもいらない。汚いの。わかる?」

早村謙介の喉仏がごくりと上下した。やがて、ゆっくり立ち上がる。

「……何を言ってる。瑞子は俺の妹だ。そんな関係のわけがないだろ」

青美は思わず笑ってしまった。乾いた、冷たい笑いだった。

「そう? 男と女が夜中に二人...

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