第12章

彼は片手で脇に放り投げていたスーツジャケットを引き寄せ、苛立つようにスマホを取り出した――が、身体がわずかに強張った。

画面に点滅している名前は、瑞子。

動きが止まり、乱れたシャツの襟元を無意識にきゅっと掴み、整えてしまう。

鈴木青美ははっと手を引き、口元に自嘲の笑みが浮かんだ。

――ほら、滑稽だ。

何もしていないだなんて口では言いながら、早村瑞子から電話が来た、その一瞬。彼女がここにいなくたって、彼は反射で身なりを直す。

まるで早村瑞子こそが正妻で、自分は法的にはまだ夫婦のはずなのに、逆に浮気相手みたいだ。

早村謙介はスマホを一度見て、それから鈴木青美を見た。逡巡の末、通話ボ...

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