第22章

早村謙介は、それ以上は求めてこなかった。

ただ彼女を抱きしめ、時おり唇を落とす。まるで、心から愛する妻と静かに睦み合うみたいに。

鈴木青美がうとうとしかけた頃、耳元で低く囁く声がした。

「帰る気がないなら、俺がこっちに引っ越す」

翌朝。寝室に残っていたのは、鈴木青美ひとりだけだった。

起き上がって身支度を整え、リビングへ向かったところで、足が止まる。

バルコニーの小さなテーブル。昨夜まであったクチナシの瓶は消え、代わりに真っ白なバラの大きな花束が置かれていた。ガラスの花瓶もどこにもない。精巧なクリスタルの花器に差し替えられている。

花弁には朝露が残り、今にも零れそうに瑞々しい。...

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