第25章

早村瑞子がふいに二歩ほど後ずさりした。足を滑らせた瞬間、身体ごと後ろへ――。

「あっ!」

短い悲鳴。次の瞬間、どさりと床に叩きつけられる。

鈴木青美は呆然と立ち尽くした。何が起きたのか理解する前に、早村瑞子が顔を上げる。目尻がみるみる赤く染まり、涙がにじんだ。

「青美……どうして押すの……? 私のこと嫌いなのはわかるけど……で、でも、こんなことまでしなくても……」

周囲を通りかかった人々が、声に反応して振り返る。

鈴木青美は、その芝居じみた言い分に思わず笑ってしまった。

床に座り込み、か弱いふりをしている早村瑞子を見下ろし、青美は小さく首を振る。

「早村瑞子、あんたのその演技...

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