第29章

一緒にいた頃は、何をされても悪い気はしなかった。鈴木青美だって、彼と唇を重ね、絡み合うことを喜んでいたはずなのに――今はもう、ただひたすら気持ちが悪い。

何年も積み上げたものは、見切ったからといって、すぐに捨てられるわけじゃない。頭のどこかではまだ愛している。けれど身体だけが、露骨に拒絶する。吐き気がするほどに。

「協議書に、そんな条項はありません」

冷たく突っぱねると、早村謙介の動きが一瞬止まり、すぐに喉の奥で笑った。

「青美。夫婦を続けるなら、夫婦の営みだって普通だろ。……それに、もう何年だ? 子どももそろそろ作らないと」

子ども?

鈴木青美は、思わず笑ってしまった。

顔を...

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