第37章

早村謙介は勢いよく顔を上げ、愕然としたまま祖父を見た。

「お爺さん、分かってるはずだ……俺と瑞子は、ありえない。瑞子は養女として早村家にいる。もし俺があいつと結婚したら、世間が何と言う? 早村家の名誉はどうなる」

「そうだよ。お前は全部、分かってる!」

祖父は怒りのあまり、かえって笑ってしまったように鼻で笑い、肘掛けをどん、と叩く。

「だったら最初からそうしろ。あの時、俺が聞いたな。――愛を取るか、家を取るか。お前は家業を取った。世間体を取った。選んだなら迷うな。なのに今さら瑞子とズルズルして、いったい何のつもりだ!」

早村謙介は唇を固く結んだ。沈黙が落ちる。やがて、低い声で絞り出...

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