第52章

「ですが……早村さま、奥さまの腹部は強い衝撃を受け、子宮に不可逆的な損傷が残っています。こちらも最善は尽くしました。ただ……」

医師は、早村謙介の顔が一瞬で強張るのを見据え、言葉を区切って告げた。

「今後……奥さまが妊娠されるのは、かなり難しいかと」

――頭の中で、何かが弾けた。

早村謙介はその場に立ち尽くし、長いあいだ瞬きすらできなかった。

妊娠が、難しい。

自分が――彼女から、母になる権利まで奪ったのか。

「……っ! 早村謙介! この畜生!!」

林原稲美が甲高く叫び、振り向きざま、真っ赤な目で早村謙介の頬を思い切り叩いた。

ぱん、と乾いた音。

「どうして!? ねえ、ど...

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