第55章

ドアがそっと閉まり、彼の大きな背中が視界から消えた。

鈴木青美はベッドの背もたれに身を預け、ゆっくりと目を閉じる。

ようやく、世界が静かになった。

――静かになった、はずだった。

それから数日。早村謙介は相変わらず毎日病院へ来た。タイミングがやけに正確で、青美が目を覚ました直後か、食事の前後、あるいは身体を拭く頃合いを狙ったみたいに現れる。

余計なことは言わない。しつこく追及もしない。

ただ、村田さんが本来やるべきことを、無言で淡々とこなしていく。

顔を拭き、スープを飲ませ、歩くときには腕を貸す。

青美は拒んだ。冷たい言葉も投げた。彼の目の前で、わざとスープの椀をひっくり返し...

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