第65章

彼は一歩踏み出し、そっと彼女を抱き寄せた。

「青美」

耳元で囁く声は、夜風よりも静かだった。

「周りが何を言おうと、俺にとってお前は俺の妻だ。早村家の、正真正銘の若奥様だ。俺はいつだって、お前の味方でいる」

鈴木青美はその胸に身を預けたまま、何も言わない。拒みもしない。

夜風が頬を撫で、ひやりとした冷気が肌の奥まで染みた。

しばらくして、彼女は軽く彼の胸を押す。

「外、寒い。戻ろう」

二人は肩を並べ、宴会場へ戻った。

香水と酒の匂い。きらびやかな衣装。ざわめきはさっきと変わらない。

――そのとき。

シャンパンカラーのミニドレスを着た女が、どこからともなく現れた。一直線に...

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