第5章
私は南条硯介の後ろについて、彼が病室の外に立ち、看護師たちの世間話に耳を傾けるのを見ていた。
彼女たちは彼の存在に気づかず、軽やかな声が消毒液の匂いが漂う空気の中に響く。
「あの子のお母さんって、月野薰でしょう?まさか南条財閥の人と婚約するなんてね」
「そうそう、そういえば、この間産婦人科で当直だった時、月野薰にそっくりな女の子を見かけたわよ。七割くらいは似てたかな」
「本当?妹さんとか?」
「ううん、聞いた話だと、南条さんの元カノらしいわよ。妊婦健診に来てて、私、月野薰本人かと思っちゃって、サインもらいそうになったわ」
南条硯介の体が明らかにこわばった。
彼の手は無意...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
縮小
拡大
