第7章
月野薰が花凛を連れて去った後、リビングは息が詰まるような沈黙に包まれた。
南条硯介はその場に立ち尽くし、まるで全身の力が抜けてしまったかのように、ゆっくりとソファにへたり込んだ。私は彼の向かいに立ち、かつてあれほど見慣れていたその顔を見つめる。
てっきり月野薰が追い出されるのを見れば、復讐を果たしたような快感を覚えるものだと思っていた。だが不思議なことに、胸がすくような感覚は一切なかった。むしろ、深い不条理と虚無感に襲われる。
「知ってる、南条硯介?」
私は彼に聞こえないと知りながら、そっと呟いた。
「後になって気づいた愛なんて、いらないのよ」
彼は突如、押し殺したよう...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
縮小
拡大
