第4章

「彼に知らせる必要はないわ」

晩香の声は、異常なほど冷静だった。

「必要ないですって?」

鈴木蘭はせせら笑った。

「花ちゃんは心臓移植が必要なのよ!お金がいるの、大金が!」

晩香は顔を上げ、その眼差しには固い意志が宿っていた。

「お母さん、私一人で何とかする」

「あなた一人で?」

鈴木蘭は鼻で笑う。

「あなたの給料で?馬鹿なこと言わないで!」

藤堂真一が車椅子を押して戻ってくると、二人の口論は中断された。彼は晩香を車椅子に乗せ、三人は共に救急処置室へと向かった。

救急処置室の外で、鈴木蘭はさらに問い詰める。

「黒川瑞樹とはもう離婚したの?」

晩香は静か...

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