第4章

美咲視点

実家からの帰り道、私は離婚届をバッグに隠し、車を走らせていた。

邸宅は、今朝家を出た時と何一つ変わらない姿でそこにあった。

『この家は、いったいいくつの嘘を見届けてきたのだろう』

駐車場に車を停め、しばらく玄関のドアを見つめる。『あのドアをくぐれば、また何事もなかったかのように振る舞わなくてはならない』

決心がつかないうちに、玄関のドアが開いた。中から漏れる暖かい光を背に、隆志さんのシルエットが浮かび上がる。

「おかえり」彼はそう声をかけ、階段を駆け下りて私の車へと向かってくる。「心配し始めたところだったんだ」

『本当に? それとも、由香里との次の逢瀬...

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