第6章

茉莉視点

学食全体が、水を打ったように静まり返った。

サッカー部の副キャプテンで、地元の名家の子息でもある近藤誠が、この『普通の学生』に、あんなに丁重な態度を取っている。

亮太は信じられないという顔だ。「誠、一体どういうつもりだ? こいつはただの……」

「黙れ!」誠が突然、亮太に向かって怒鳴った。その顔は恐怖に染まっている。「お前、自分が誰に話しかけてるか、わかってんのか!?」

麻衣も呆然としている。「誠、あなた一体……」

誠の声は震えていた。「この方は龍崎信也様だ。龍崎財閥の、ご子息なんだぞ!」

えぇっ!?

学食全体が、完璧な静寂に包まれた。

誰もが信...

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