第3章
美智視点
三時間ぶっ通しで車を走らせ、葉山浜市を過ぎたあたりで、レンジローバーはまるでそのために生まれてきたかのように、青浜道1号線のカーブを滑らかにこなしていく。満足感が波のように押し寄せてきた。
私はボリュームを最大まで上げた。スピーカーからテイラー・スウィフトの『シェイク・イット・オフ』が鳴り響き、窓を全開にして、喉の張り裂けんばかりに一緒に歌った。
潮風が車内に吹き込み、髪をぐちゃぐちゃに絡ませたが、直そうとも思わなかった。大勢のディナーを企画したり、レストランを予約するときにみんなの食事制限で頭を悩ませたりする必要なんてない。最高の気分だ!
ただ、運転していた。
前方の道が開け、そこにあった。青浜大橋が、絵葉書の一場面のように、渓谷にアーチを描いている。インスタグラムで千回は見たけれど、実際にこの場に立ち、この瞬間を、自分で選んでここにいるという感覚は、どんな想像も及ばなかった。
展望スペースに車を停め、エンジンを切った。
ここでの静寂は、いつもとはまったく違って感じられた。ビーチでの休暇なんて贅沢だと諭す真の声はない。レストランのチョイスに文句をつける理奈もいない。私が心を通わせようとすると、うんざりしたように目を白黒させる亜紗里もいない。
ただ、六十メートルほど下で、波が岩に打ち付ける音だけが聞こえる。
スマホを掴み、橋や、海や、見つめると痛いほど青い空の写真を、たぶん三十枚は撮った。それからタイマーをセットして、風になびく髪と、心からの笑顔を浮かべた自分の写真を一枚撮った。
「ずっと、こうしているべきだったんだ」と、私は誰に言うでもなく声に出した。
車に戻り、南へ向かって走り続けた。
青浜温泉は、まるで重力など意に介さないとでも言うように、崖の上に鎮座していた。受付の女性は、私がチェックインを終える前に、シャンパングラスを差し出してくれた。
「海崖温泉のプライベートテラス付きのお部屋でございます」と彼女は温かく言った。「きっとお気に召しますわ」
彼女の言葉は間違っていなかった。
部屋の扉を開けると、世界の果てに突き出したかのようなデッキが広がっていた。インフィニティプールの、私だけのインフィニティプールの向こうには、名前も知らない様々な青色を湛えた青海洋が広がっている。
私は手すりのそばに立ち、シャンパンの泡が舌の上で弾けるのを感じていた。
これこそが、真のクレジットカードの使い道よね? 彼のおもちゃの誕生日プレゼントや、彼のお母さんの薔薇の茂みや、彼の妹の終わりのないショッピングのためだけじゃなく。
太陽が沈み始める頃には、私は白いビキニに着替えていた。かつて真が「露出しすぎに見える」と言ったから、わざわざ買ったものだ。ミニバーから新しいシャンパンをグラスに注ぎ、インフィニティプールの縁に陣取った。
光は完璧だった。インスタグラムで言うところの、ゴールデンアワーだ。
たぶん五十枚は写真を撮った。シャンパングラスを掲げる私。海を背にプールに入る私。ラウンジチェアで本とサングラスをかけてくつろぐ私。
ベストな三枚を選び、インスタグラムを開いた。
私のフィードはいつも、慎重に作り込まれた写真でいっぱいだった。チャリティーディナーでの真と私、理奈とのサンデーブランチ、歯を見せて笑っても目は笑っていない家族の集まり。
今日は違う。
最初にプールの写真を投稿した。そしてキャプションを添える。【やっと見つけた、私の幸せな場所】 🌊✨ #セルフケアサンデー #最高の人生満喫中 #ビッグサー
シェアボタンの上で、親指が一瞬だけためらった。
知るか。
投稿は公開された。
スマホを置く間もなく、それは振動し始めた。一回。二回。そして絶え間なく。
真からだった。
【母さんの血圧の薬はどこだ?】
【亜紗里が自分のスナックが見つけられないって。グルテンフリーのやつだ】
【美智、このメッセージ見てるんだろ】
【ふざけるな。母さんは今すぐ薬が必要なんだ】
私はシャンパンをちびちび飲みながら、メッセージが次から次へと積み重なっていくのを眺めていた。
ようやく、返信を打ち込んだ。【血圧の薬もスナックも、どっちも緑のトートバッグの中よ。良い旅を】
すぐに三つの点が表示された。真が入力中だ。
彼が何と言ってくるか見るまでもなく、私はスマホの設定を開き、【おやすみモード】をオンにした。
「さて」と私は夕日にグラスを掲げて言った。「本当の休暇は、今から始まるのよ」
翌日、私は北へ向かい、名波谷へ車を走らせた。
最初のワイナリーのワインテイスティングルームは、剥き出しの木材と自然光に溢れ、丘の中腹をどこまでも続く緑の葡萄畑の列が見渡せた。私と同い年くらいの女性ソムリエが注いでくれたピノは、土とチェリーと夏の味がした。
「ここは初めてですか?」と彼女は尋ねた。
「自分のためだけ何かをするのは、これが初めてなんです」と私は認めた。
彼女は、わかっている、というように微笑んだ。「でしたら、思いきり楽しまないと」
三杯目を注がれる頃には、私はこの五年考えないようにしてきたことについて考えていた。
どうしてこうなってしまったんだろう? ナパに来たことじゃない。青浜州に来たことでもない。そうじゃなくて、自分の居場所を得るのに、誰かの許可が必要な今の人生に。
「人生って、こんなに素敵になり得るんだ」私はソムリエに言うでもなく、自分に言い聞かせた。「どうして、誰かが許可してくれるのを待っていたんだろう?」
ソムリエは何も聞かずに私のグラスを満たした。「遅すぎるなんてことはありませんよ」
私がカベルネのグラスを唇に運ぼうとした、その時だった。スマホが鳴った。
知らない番号。青浜州のエリアコードだ。
私は電話に出た。
「里崎美智さんですか?」
男の声だった。
「はい?」
「こちらは青浜州警察高速隊の木原警部です。ご主人の里崎真さんが、青浜岬付近の青浜道1号線で車両事故に遭われました。頭部に外傷を負い、名波半島医療院に搬送されています。できるだけ早く病院へ向かってください」
ワイングラスが口元で止まった。
「すみません、何ですって?」
「ご主人が事故に遭われたんです。名波半島医療院にいらっしゃいます」
「青浜岬?」私は呆然とした。「彼が青浜岬にいるはずがありません。鷲原公園へ行く予定でした。真砂州の」
木原警部は少し間を置いた。「奥さん、こちはただ把握している情報をお伝えしているだけです。事故は青浜岬の南、約十五マイルの青浜道1号線で発生しました。病院へ向かえますか?」
私の手が震え始めた。
「どうして彼が青浜道1号線なんかに?」
