第4章
美智視点
「奥様? まだお電話に出ていらっしゃいますか?」木原の声が、くぐもって遠くから聞こえてきた。
「行きます」私はすでにドアに向かい、鍵をごそごそと探しながら答えていた。「今すぐ家を出ます」
ソムリエに何と言ったのか、どうやって車までたどり着いたのか、記憶にない。
真が怪我をした。頭部外傷で病院にいる。それなのに私は、夫が車で何に突っ込んだかもわからないまま、ワインの試飲会でインスタグラムに写真を投稿していたのだ。
罪悪感が波のように押し寄せる。おやすみモードをオフにしてしまっていた。
そう、私たちには問題があった。ええ、彼に対して正当な理由で腹を立てていたことは千...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
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