第107章

レオ視点

嬉し涙。

運命のルナを前にして、俺が喜びの涙を流すまで儀式は始められないと母に言われていた。古い群れの伝統がどうとかで。

リナの瞳が潤むのがわかった。まったく、母さんは本に載っている迷信や伝統を一つ残らず覚えているんだから。だが、リナを――まじまじと見つめて、俺は母の言わんとしたことを理解した。目の前に立つ女性は、ただ美しいだけではなかった。生まれ変わったかのようだった。真紅のドレス、自信に満ちた立ち居振る舞い、自らの価値を心得ている者としての身のこなし――これこそが、リナが本来あるべき姿なのだ。

群衆のどこかから、母の満足げなため息が聞こえた。

ソーン長老が咳払いをし、皆の意識を...

ログインして続きを読む