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リナ視点

エレナの診療所に駆け込んだ瞬間、消毒液の強烈な臭いが壁となって押し寄せてきた。腕の中には、ぐったりとしたカイラがいる。彼女の呼吸はあまりに浅く、今にも止まりそうだ。施設を脱出して以来、ポールの毒による黒い筋はさらに首筋へと這い上がっていた。

「診察台に乗せて」エレナが指示を飛ばす。悲しみに暮れる間もなく、治療師としての本能が彼女を突き動かしているようだ。彼女は素早く棚から必要な器具を取り出していく。「急いで。でも、慎重にね」

私は慎重にカイラを横たえた。疲労とアドレナリンで指先が震えている。ポールの鋭い爪がカイラの胸を引き裂いたあの光景が、脳裏に焼き付いて離れない。あの...

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