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リナ視点

闇。

それは眠りのもたらす心地よい闇でもなければ、月のない夜の恐ろしい闇でもない。それは全く別種の何か――光も、音も、そして希望さえも飲み込んでしまうような、完全なる虚無だった。私はその無の中で漂っていた。重力もなく、方向感覚も失い、ただ意識だけが、私が存在していることを繋ぎ止める唯一の綱だった。

「スノー?」私は呼びかけた。その声は虚空に奇妙に響き渡る。「スノー、どこにいるの?」

静寂。

私の狼の気配がないことが、まるで物理的な打撃のように私を打ちのめした。何年もの間、どんなに暗い時でも、スノーはそこにいてくれた。変わらぬ相棒であり、力と安らぎの源だった。幼い頃以来初めて...

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