チャプター 56

リナ視点

レオの腕の中で、私の体はこわばったままだった。彼の体温が服を通してじんわりと伝わり、松と冬杉の混じった馴染みのある香りが、まるで安心毛布のように私を包み込んでいるというのに。恐怖はまだ胸に爪を立てていて、息をするたびに苦しく、必死な感じがした。

「私が恐れているのは、ルナとして失敗することだけじゃないの」私は彼の胸に顔をうずめ、くぐもった震える声で囁いた。「私の正体が、あなたやあなたの家族に何をもたらすかが怖いの。もし私の過去が――私がしてきたこと、いた場所が――あなたが築き上げてきたものすべてを破壊してしまったら?」

レオの腕に力がこもる。彼の顎が私の頭頂部に乗せられるのを感...

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