第2章

桜井絵里視点

宴会場全体が、死んだように静まり返った。

私はそこに立ち尽くす。心臓が胸を突き破って飛び出してしまいそうなほど、速く鼓動していた。誰もが私に視線を注いでいたが、私の目には大輔さんしか映っていなかった。彼の返事を、ただ待っていた。

八年ぶりに、私は勇気を振り絞って自分の気持ちを伝えたのだ。驚き、あるいはせめて、優しい拒絶の言葉が返ってくると思っていた。

だが、私は間違っていた。

大輔さんの顔は瞬時に青ざめ、その怒りの表情に、私の心は胃の底まで沈んでいくようだった。

「絵里、君はまだ子供だ」彼の声は、まるで地獄の底から響いてくるかのように冷たく、宴会場にこだました。「不適切だし、気味が悪い」

一つ一つの言葉が、ナイフのように私の心臓に突き刺さる。

気味が悪い?

彼は私のことを、気味が悪いと言ったの?

周りからひそひそ話が聞こえ、驚きや同情、そして嘲笑さえ含んだ視線を感じる。でも、私にできるのは、ただそこに立ち尽くし、大輔さんの冷たい顔を見つめることだけだった。

「でも、私はもう大人です!」声を震わせながら、必死に何かを取り繕おうとした。

大輔さんは冷たく笑った。「年齢と成熟はイコールじゃない、絵里。この……感情の暴走について、ここにいる皆さんに謝罪することをお勧めするよ」

感情の暴走?

彼は私の心からの告白を、感情の暴走だと切り捨てた。

涙で視界が滲み始める。周りを見渡すと、ショックを受けた顔、気まずそうな顔ばかりが目に入った。

「なんてこと、あの子どうかしてるんじゃない?」

「気まずすぎるわ」

「可哀想な子」

そんな言葉たちが、蜂の羽音のように私の周りでざわめく。逃げ出したい、穴があったら入りたい。なのに、足は鉛のように重かった。

その時、優雅な声が響いた。

「大輔、どうかしたの?」

振り返ると、美しい女性が優雅に大輔さんへと歩み寄るところだった。年は二十五歳くらいだろうか。黒のイブニングドレスを身にまとい、成熟した女性の魅力を放っている。

私の心をさらに打ち砕いたのは、彼女を見た瞬間、大輔さんの強張った表情が目に見えて和らいだことだった。

「綾子、ちょうどいいところへ」彼の口調には、安堵の色さえ滲んでいた。

綾子?この女は誰?

美しい女性は優雅に大輔さんの腕を取り、それから完璧な笑みを浮かべて招待客の方を向いた。「絵里ちゃんは、きっと感情的になりすぎてしまったのね。可哀想な子」

――可哀想な子。

また、子供。

彼女の声は柔らかく優しかったけれど、私には嘲笑に満ちているように聞こえた。それ以上に耐えられなかったのは、彼女が私を見た時、その目に一瞬きらめいた勝利の光だった。

ついに涙が溢れ出した。

私は踵を返し、宴会場から走り去った。もう、あの哀れみの視線に耐えることはできなかった。

ホテルの化粧室に駆け込み、鏡に映る自分の腫れた目と崩れたメイクを見つめる。八年間の待ち時間、八年間の恋心、そのすべてが、彼の「気味が悪い」という一言で破壊された。

突然、化粧室のドアが開いた。

入ってきたのは、あの美しい女性――綾子だった。

彼女はまだあの完璧な笑みを浮かべていたが、ドアが閉まり、二人きりになった瞬間、その表情は一変した。

偽りの優しさは消え失せ、冷たい計算高さが取って代わった。

「正式に自己紹介させてもらうわ」彼女は洗面台に寄りかかり、私を値踏みするように見つめた。「竹内綾子。大輔の婚約者よ」

婚約者?

世界が、一瞬にして崩壊するのを感じた。

「……何ですって?」私の声は、かろうじて聞き取れる程度だった。

綾子の笑みは、さらに輝きを増した。「三ヶ月前に婚約したの。もうすぐ、私が新しい高橋奥様になるのよ」

婚約者。三ヶ月前に婚約。

何か言いたかったが、喉が詰まって言葉が出てこない。

「あら、お嬢さん」綾子は私に歩み寄りながら、吐き気を催すような偽りの気遣いを見せた。「大輔はあなたのこと、哀れだと思ってるわ。彼があなたに我慢してるのは、あなたのお預かり財産があるからよ」

「本気で彼があなたのことを気にかけてると思ってた?」彼女は続けた。一言一言が、針のように私の心を突き刺す。「大輔みたいな男が、あなたみたいな甘やかされたお嬢ちゃんを欲しがるわけないじゃない。あなたは彼にとって、お荷物でしかないのよ」

私の手が震え始めた。この八年間、大輔さんは少なくとも私のことを気にかけてくれている、大切に思ってくれていると信じていた。なのに、今、彼女はそれがすべてお金のためだったと言うの?

「嘘よ」私はようやく声を取り戻した。

綾子は冷たく笑い、ハンドバッグからスマートフォンを取り出した。「面白いものを見つけた」

彼女は録画を始め、カメラを私の顔――涙で汚れ、メイクも崩れ落ちた顔――に向けた。

「この醜態は、私たちの社交界でかなり面白い見世物になるわね」彼女は録画しながら言った。「高橋家の被後見人が、自分の誕生日パーティーで醜態を晒すなんて」

「やめて!」彼女のスマートフォンを掴もうとしたが、ひらりとかわされてしまう。

「大輔を説得して、あなたをどこかへ送らせるわ」綾子は録画を続けながら、悪意に満ちた声で言った。「私たちから遠く離れた場所へ。そうね、地方の国立大学か、厳しい寮生活のある遠隔地の大学に編入させるわ。」

「私の人生をめちゃくちゃにしないで!」私は怒りに任せて叫んだ。

綾子は録画を止め、スマートフォンをしまうと、表情をさらに冷たくした。「お嬢さん、あなたにそもそも人生なんてないのよ。あなたは、亡くなったお父様への義務感から彼が引き取った、ただの慈善事業の対象にすぎないの」

その瞬間、私の心は完全に砕け散った気がした。

彼女が口にするすべての言葉が、ナイフのように私の心を切り刻む。

だが、彼女が背を向けて去ろうとした、まさにその時。私の内側で、突然炎が燃え上がった。

いや、こんなふうに負けるわけにはいかない。

この女に、私の人生をやすやすと破壊させてたまるものか。

私は手の甲で涙を拭い、鏡で髪を整え、そして綾子に向き直った。

「あなたが勝ったとでも思ってるの?」私の声はまだ震えていたが、今は決意が宿っていた。「あなたは、私のことを何も知らない」

綾子は眉を上げた。私の突然の反撃に驚いたようだった。

「私はまだ十八歳かもしれないけど、あなたが想像するような無力な女の子じゃない」私は一歩ずつ彼女に近づいた。「それに大輔さんのこと……彼は私のことなんて気にしてないと思ってるかもしれないけど、誰よりも真実を知っているのは私よ」

今日の午後、ハンドルを握りしめていた彼の手。私が拓哉にキスされているのを見た時の、彼の瞳の怒り。「俺の保護下にある」と言った時の、あの口調。

あれは演技なんかじゃない。本物の感情だった。

「結婚式でも何でも挙げればいいわ」私は綾子の目を見据えた。「でも、これで終わりだなんて思わないで」

そう言い放つと、私は化粧室のドアを押し開け、大股で歩き出した。

心はまだ痛んでいたけれど、同時に怒りと決意で燃え上がっていた。

――竹内綾子、戦争を望むなら、受けて立つわ。

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